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亡き友との約束叶えた二人展 小名浜の斎藤さん 20日まで・アートサロンいわき
長年にわたり趣味の絵画を楽しんだ女性ふたりの油彩画展「2024二人展『華によせて』」が20日まで、中央台飯野2丁目のアートサロンいわきで開かれている。小名浜在住の斎藤弘美さん(77)が、2年前に77歳で急逝した友人石井京子さんと生前に交わした約束を叶(かな)えようと開いた二人展。色彩豊かに描いたバラやカサブランカなどの花々が会場を彩っている。
斎藤さんは50歳のころ、画家石井實さんが小名浜の自宅アトリエで開いていた絵画教室で絵を始めた。「まったくの素人」だったが、デッサンの基礎から粘り強く教えてもらい、夢中になった。何より絵を描く時間が仕事や家事のプレッシャーから解放されるひとときになっていた。
石井さんとはこの絵画教室で出会った。美大で油彩を学び、大胆に迷いなく筆を進めて行く石井さんの姿は斎藤さんのあこがれだった。「生まれ持って才能をお持ちの方だったと思う。ずっと憧れて背中を追い続けてきました」
また、二人はともにいわき市美術協会のメンバーで、バラ愛好家という共通点もあった。斎藤さんは61歳のときに夫を亡くしてから、夫が残したバラや庭の花たちを大切に育てており、石井さんとは切り花を贈り合ったり、希少なバラの話で盛り上がることもあったという。
ふたりは好間町の市民ギャラリー「木もれび」で2018(平成30)年に初の二人展を開いた。会場を訪れた同級生や友人たちと和やかな時間を過ごし、会期終了後に「次も必ず二人展を開こう」と約束した。しかしその3年後、石井さんに病が発覚。2022(令和4)年に入院したものの、病状が急変し、1カ月後に帰らぬ人となった。
果たされなかった二人展の約束。その後、家族を通じて石井さんが入院直前まで絵を描いていたことが分かった。なかには斎藤さんが贈った青いデルフィニウムの花を描いた新作もあった。斎藤さんは「あの時の花を描き残してくれたんだ」と絵を見て胸がいっぱいになった。画力は衰えることなく、斎藤さんを魅了した生き生きと鮮やかな筆づかいもそのまま。絵画から明朗快活だった生前の石井さんの明るい声が聞こえてくるようだったという。
「コロナ禍の折、別れを告げられなかった絵画の仲間もいる。石井さんの素晴らしい作品を多くの人に届けたい」という思いが高まり、家族の了承を得て二人展を開く運びとなった。庭で育てたバラやカサブランカなどの花を中心に、静物、風景などを展示。長年の付き合いのある友人たちが会場を訪れ、作品を心に収めている。午前10時から午後3時まで。
(写真:二人展を開いた斎藤さん)