ニュース
常磐湯本・みゆきの湯 来年3月末での廃止方針巡り 地元から「説明不足」の声も
常磐湯本町の「湯本駅前みゆきの湯公衆浴場」を巡り、来年3月末をもって廃止とする条例案は13日、市議会12月定例会の政策総務常任委員会で審査され、賛成多数で可決された。このため同委員会には、条例案の取り下げを求める湯本一番町商店会などからの請願が付託されていたが、みなし不採択となった。
みゆきの湯については、JR湯本駅前の再開発に合わせて廃止は既定路線となっていたが、地元からは「説明が足りない」などといった不満の声が上がっている。
■ ■
みゆきの湯の廃止方針にあたり、請願では「再開発への影響が出ないような時期までの営業を続けてほしい」と訴えた。その関係者の一人が、湯本駅前の「和菓子の久つみ」を営む九頭見淑子さん(77)。
同店は1912(大正元)年創業の老舗で、温泉街の変遷を見つめてきただけに、「駅前の再開発には反対しないが、商店会にもしっかりと声をかけ、皆が納得する形でみゆきの湯の廃止を行ってほしかった」とひと際残念がった。
みゆきの湯は2007(平成19)年、既存の共同浴場が老朽化したことを受け、駅前から北方向に伸びる「一番町商店街」の通り沿いにオープンした。九頭見さんは当時を振り返り、「公衆浴場が商店街にできたと皆で喜んだ」と懐かしむ。
入浴客は近隣住民に加え、湯本駅そばと好立地のため、市内一円から訪れる。ハワイアンズスタジアムいわきで行われるJリーグの試合を観戦に来たサポーターの利用も多い。ただ、今年10月に「レジオネラ菌が検出されて臨時休業になった時は、お店に来る人も目に見えて減った」という。
市観光振興課によると、昨年度の利用者数は8万7097人。経営状況は好転し、154万3898円の黒字となっている。
佐藤和良議員(創世会)が12日、市議会12月定例会の質疑で、みゆきの湯の件を取り上げた際、赤津俊一市観光スポーツ文化部長は「(廃止後の)代替措置について考えておりません」と答弁した。九頭見さんは中継で傍聴していたが、「本当にがっかりした。無くなった後について、しっかり示すべきではないのか」と憤る。
さはこの湯公衆浴場までは約550m離れており、足が不自由な高齢者が歩くことは容易ではない。またみゆきの湯は介護浴室を完備しており、「障がいを持ちながら、家族と一緒に温泉を楽しみにしている人もいる」と客層も幅広い。
常連客も多く、13日昼に足を運んでいた80代の女性は「週に3、4回は来ている。さはこの湯まで歩くのは遠い。何とかならないのかなぁ」と話した。
■ ■
地元への説明不足に対し、赤津部長は13日の政策総務常任委員会の席上、「廃止の条例は今議会に出しているので、直接的な議論がしづらかった。仮に先に伝えれば議会軽視にもなる」と理解を求めた。
湯本駅前の再開発で、来年6月にも建物を解体するスケジュールとなっており、「あらためて(計画を)変えることはあり得ない」と重ね、「足りない部分は真摯(しんし)に受け止め、議案が仮に成立すれば、説明会を行いながら理解を深めてもらう」と語った。
また、みゆきの湯は指定管理者制度を採っており、来年3月で満了となる。この点にも触れ、延長することは「事実上困難」との認識を示した。
(写真:来年3月に営業を終える見通しのみゆきの湯)