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途絶えると大火起きる?平沼ノ内の奇祭・水祝儀 新婚の対象者なく青年会長名乗り
いわき市平沼ノ内地区で400年以上前の江戸時代から続いているといわれる奇祭「沼ノ内の水祝儀」が13日、同地区の愛宕地蔵尊で開かれた。新婚のお婿(むこ)さんに冷水を浴びせて地区の無病息災や家内安全、豊漁豊作を願う新年の伝統行事で、市の無形民俗文化財に指定されている。
大勢の住民らに見守られながら冷たい「洗礼」を浴びたのは、沼ノ内青年会の会長を務める会社員根笹圭悟さん(25)。根笹さんは実は独身。今年は地区内に対象者がいなかったため、「伝統を途絶えさせてはいけない。自分がやるしかない」と志願した。
この日は晴れたが、時おり冷たい風が吹きつけるあいにくの天候。地蔵尊の中で地区の役員とともに魔除けとなるダイコンを彫った印を額に押すなどの神事を執り行った後、根笹さんは藁ぞうりに浴衣1枚の姿で、笹竹としめ縄に囲まれた海岸の砂を盛った土俵に立った。
そして「桶取り」といわれる同じ青年会の4人が四方から足、腰、頭の順に3度にわたって冷水を浴びせた。桶取りたちは一気に行わず、桶を担いでわざとよろけながら見物の住民や撮影に陣取った人たちに冷水を浴びせる「お約束」のハプニングを連発し、寒風に耐えて立つ根笹さんを焦らして会場を沸かせた。
この間、約45分。ずぶ濡れになって寒さに耐えた根笹さんは、「これまではかける側だったが、地区の皆さんが1年を無事に過ごせるのなら、自分が水をかぶったかいがあります」と笑顔を見せた。
明治時代に1度、水祝儀が途絶えたとき大火が起きたと言い伝えられている。沼ノ内の鈴木昭一区長(68)は「わたしが知る限り花婿がいなかったのは今回が初めて。少子化で若者が少なくなったことが大きい。ホームページなどを活用して、今後は広く市内からの参加を呼びかけたい」と話していた。
(写真:冷水を浴びせられる根笹さん)