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<震災14年ー向き合う①>ふるさと薄磯思い動画制作 中央台南中・鈴木蒼空さん
東日本大震災・東京電力福島第一原発事故から、11日で14年を迎えます。いわき民報社では「向き合う」と題して紙面を通じ、さまざまな声や事象に耳を傾けていきます。
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中央台南中2年生の鈴木蒼空さん(14)は震災の前年、5月に生を受けた。自宅は鳴き砂で知られる薄磯海岸の目と鼻の先、潮騒が聞こえる平薄磯の南街にあった。
2011年3月11日午後2時46分。激しい揺れのあと、大津波が薄磯の集落をのみ込んだ。薄磯地区の被害は市内で最も多く、111人が犠牲に。鈴木さんは家族とまず豊間小に、そして津波が来たと知り中央台東小に避難し、からくも難を逃れた。
住宅の87%が全壊し、流失家屋は65%。周りの家の多くはがれきとなっていたが、なぜか自宅は1階部分が大きく削られただけで、同じ区画の2軒だけが姿を残していた。海岸の監視棟で波が割れて波が弱まり、棟の延長にあった鈴木さんの家が流されなかったのではないか、との憶測がうわさされたが、真偽のほどは分かっていない。
自宅のあった場所はさら地となり、家族は中央台に引っ越した。両親から「生まれたころは薄磯に住んでいて震災で津波に遭った」との話は聞いていたが、当時の話を聞くのは憚(はばか)れた。「何か聞くことに戸惑いがあったんです」
詳しく知るきっかけとなったのは、震災と復興についての学びを深めた1年生のときの防災学習。講師として訪れた「いわき語り部の会」のメンバーがつむぐ当時の話に引き込まれ、いわき震災伝承みらい館であらためて震災と向き合った。
津波を乗り越え、いまも鳴き砂が残ることに驚き、感動した。そして放送委員会の顧問を務める学年主任の亀岡点先生のアイデアにより、生徒たちがどんなことを学び、どう感じたかを動画にまとめる活動が始まったことで、震災と「私の原点」を強く意識するようになった。
昨年度の活動に続き、5分に編集された動画「伝える~This is the Place」には、いわき震災伝承みらい館、家族と一緒に避難した中央台東小で偶然にも語り部を務めることになった鈴木さんの姿が、震災前に身近な薄磯海岸で無邪気に遊ぶ幼子の鈴木さんの写真などとともに収録された。
鈴木さんは動画の中で前を向き、こう語る。私にとって薄磯はとてもつながりが深く、すごく身近な場所なんです――。
動画はパナソニックによる「キッド・ウィットネス・ニュース(KWN)日本コンテスト2024」に出品し、最終ノミネート作品に選ばれた。審査結果は16日、大阪府吹田市で開かれる表彰式で発表される。
(写真:薄磯をテーマに動画を手がけた鈴木さん=中央=。両端は制作に携わった竹之下瑠菜さんと白土菜南さん)