演劇界の芥川賞と称される「第69回岸田國士戯曲賞」(白水社主催、公益財団法人一ツ橋綜合財団後援)の選考会が13日、東京都千代田区神田神保町の日本出版クラブで行われ、いわき市出身の俳優で劇作家、演出家の笠木泉さん(49)が脚本を手掛けた戯曲「海まで100年」が選ばれた。
笠木さんは2021(令和3)年に発表した戯曲「モスクワの海」でも最終選考にノミネートされているが、受賞は初めて。「応援してくださった皆さまに感謝しております。胸いっぱい。ありがとうございます」と自身のSNSで受賞の喜びを語った。
笠木さんが受賞した「海まで100年」は、神奈川県横浜市の大黒ふ頭で働く男女3人が、苦しい状況の中にある大きな違和感や徒労感を持ちながらも、ささやかな希望を見つけて互いに手を差し伸べて生きていく物語。主宰する演劇ユニット「スヌーヌー」の演劇公演で、昨年12月に横浜市の象の鼻テラスで上演されて話題となった。
13日の審査会では市原佐都子、上田誠、岡田利規、タニノクロウ、野田秀樹、本谷有希子、矢内原美邦さんが選考委員を務め、選考の結果、劇作家、演出家、俳優の安藤奎さん作の「歩かなくても棒に当たる」とともに選ばれた。
笠木さんの物語には必ず故郷の福島が登場しており、「海まで100年」でも登場人物の女性が辛い日々を捨て、実家のある福島の海に旅に出るシーンが描かれた。
選考理由について、振り付け、演出、戯曲作家の矢内原さんは「『私の海』という問いかけを通して、福島に対する個人的な記憶や感覚が浮かび上がる様子は、まさに詩的な流れを作り出していました。笠木さんの作品からは、その微妙なうつろいと、過去と現在をつなぐようなふんわりとした時間の流れの印象を受け取ることができました」とコメントしている。
笠木さんは毎月第2土曜日発行のいわき民報で「わたしのいわき通信―演劇と猫、それからビール―」を連載し、受賞作についても昨年12月の連載で触れた。
受賞に際し、「この度『海まで100年』という作品で第69回岸田國士戯曲賞を受賞しました。『もう少し書いていいのよ』と励ましていただいた気持ちです。いつもいわき民報のエッセイを読んでくださっている皆さまにも心から感謝しております。これからもどうぞよろしくお願いいたします!」と、本紙に喜びのコメントを寄せた。
授賞式は5月12日午後6時から、日本出版クラブで行われる。
(写真:岸田國士戯曲賞に輝いた笠木泉さん)
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いわき市出身・笠木泉さん 岸田國士戯曲賞に輝く 本紙でエッセイ連載中
