いわき信用組合(小名浜花畑町、本多洋八理事長)が事業実態のない会社による迂回融資に加え、無断で預金者の口座を作ってそこに融資する形(無断借名融資)で、大口取引先が返済する資金をねん出するなどした問題。
不正は組織的に少なくとも約20年にわたって1293件あり、総額247億7178万円だったことが明るみとなり、地域の金融機関が引き起こしたあまりにも途方もない不祥事に、市民には驚きが広がっている。
「当組合の対応は、自ら積極的に事実関係を明らかにしようとするものとは真逆であり、意図して全体像を隠そうとしていると疑わざるを得ないものである」。250ページ近い第三者委員会(新妻弘道委員長=弁護士・磐城総合法律事務所)の報告書は、いわき信組に対する強い不信感で覆われていた。
5月30日にいわき市内のホテルで行われた第三者委員会の記者会見には、新聞・通信、テレビに加え、専門誌など30社以上のおよそ70人が参加した。
会見の直前に報告書がウェブでアップロードされたが、誰もが知りたかった不正の総額よりも、まずは報告の過程でも虚偽や隠ぺいが行われていたと紙面に割いていた。
不正にかかわった証拠となるパソコンは、問題発覚後に職員が独断でハンマーで破壊・処分したというが、果たしてそのまま信じられるのかと疑義を呈した。
第三者委員会のメンバーで、公認会計士の尾田智也氏は「不正融資のリストは提示されたが、他は何も分からないという報告・説明だった」と明かす。やむなく2007(平成19)年からの預金・融資データをすべて解析し、少しでも不審な内容があれば確認する作業に追われたという。
報告書では職員がおよそ2億円の横領に手を染めた事実も示され、その穴埋めに無断借名融資が使われていた。横領は2010~14年の2度にわたって行われたが、何ら処分は下されず、退職後も返済を求めた事実ははっきりしない上、いわき信組が回収のために不動産関係の会社を設立していた。
またこれらの事実と比較して矮小化されがちだが、別の職員が2009年に飲食・遊興費目的で、支店の金庫の帯封現金から20万円を持ち出したことも認定。この人物は自己都合退職後、いわき信組が影響力を持つ企業に再就職した。
第三者委員会ではいずれの問題にも、元理事長・会長の江尻次郎氏の存在を強調。無断借名融資では代表理事のみならず、常勤理事や常勤監事が積極的に関与し、さらに多数の職員がかかわったと指摘する。
(写真:報告書について説明する第三者委員会)
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いわき信組 第三者委員会「意図して全体像隠そうとしている疑い」と指摘
