いわき地方を代表する秋の味覚のひとつ「サンシャインいわき梨」の収穫がお盆前から始まり、みずみずしさとシャリッとした食感が特長の「幸水」の流通が本格化しつつある。
今年は幸水の実が成長していく春先から雨が少なく、空梅雨傾向だったことも踏まえ、なかには収穫量が例年の6、7割程度という農家も。
全体的に実も小ぶりだが、その分甘さが際立ち、先週のまとまった雨でみずみずしさが増すなど実の質も上がりつつある。今週半ばには出荷の最盛期を迎えそうだ。
梨の栽培は江戸時代に旧棚倉藩が奨励したことで広がった。同藩が統治した上小川、下小川両村、赤井村などが産地としていまに続いており、少子高齢化などを背景とした後継者問題などにより生産者は減少傾向となっているものの、小川町西小川のJA福島さくらいわき梨選果場を拠点に、国内外にブランド梨が流通している。
この時季は生産農家が運営している直売所も賑わいを見せており、閼伽井岳(赤井嶽)のふもとに農地と直売所を置く、マルウチ誓子梨園には11日の販売開始以降、市民たちが連日、ひっきり『なし』に直売所を訪れては、たわわに実った幸水を買い求めている。
同園では幸水のほか、来月から旬を迎える果汁たっぷりで滑らかな食感の豊水、秋が深まるにつれて食べごろとなっていく涼豊、新高を栽培しているが、やはり日照りの影響か、今季は実が小ぶりという。
「贈答用に喜ばれる大粒の梨を探すのが一苦労」と従業員。小川町下小川で幸水、豊水を栽培している鈴木訓良さん(76)も「今年は春先から雨が少なく、何度も水をまいたんだけど、昨年に比べ5、6割しか実らなかった。相当な不作」と嘆く。
近くの農家も同様に収穫量は「例年の7割程度」というが、その分甘さが凝縮した上、「お盆前に降ったまとまった雨が『恵みの雨』となるかな。甘いけど、みずみずしさが加わらないと美味しくないよね」と質の向上に期待を寄せる。
選果場も12日の操業開始直後こそ、まとまった量は集まらなかったが、「週半ばには本格的な流通が始まると思う」と、選別作業でベルトコンベヤーに流れる梨の数も増加傾向にあるという。
幸水の収穫は現状で見通しは不透明だが、味は太鼓判。まとまった雨でこれから旬の豊水とともに実自体が大きくなっていことも見込まれ、大きな心配はしていないという。ベトナムへの輸出も本格化していくはずだ。
(写真:本格化してきた幸水の収穫作業=マルウチ誓子梨園)
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直売所にはひっきり『なし』に買い求める人 いわき梨の収穫・流通が本格化






