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1点吊りの伝統復活 遠野和紙制作者・高嶋祥太さん 歴代職人の志を継承へ
遠野町上遠野で県伝統的工芸品「遠野和紙」の技術継承とともに、製造と販売に取り組んでいる高嶋祥太さん(40)は昨年暮れから、手漉(す)き和紙の製造工程で用いる、簀桁の吊り紐を遠野和紙伝統の1本にする技法に挑んでいる。
一般的には和紙の原材料と水が入り重くなる簀桁(すけた)を1本の紐で吊(つ)り支えるのは難しく、同地では最後の遠野和紙職人の瀬谷安雄さんが連綿とつないできたが、2014(平成26)年に逝去してからは途絶した。
高嶋さんは瀬谷さんら歴代職人の志を尊重し、『本物』の遠野和紙を後世に伝えていくためにも、1点吊りを復活させた。
「遠野和紙といえば1点吊り」。これが400年の伝統を誇る遠野和紙の定義として認知されていたが、瀬谷さんを失った後、1点吊りで和紙を漉くことができる後継者はあらわれなかった。
作業の際、地元産の良質な楮と、『ネリ』といわれる粘剤のトロロアオイを水に溶かした原料を簀桁(漉桁とも)で漉くが、その重さから繰り返しての作業は体に負担がかかる。
天井に設置した竹からの紐で簀桁を吊るし支えるが、1点吊りは複数で支える技法に比べてバランスを取るのも難しく、遠野和紙の技術継承に取り組む歴代の遠野町地域おこし協力隊員らも、その大変さから3点吊りを採用してきた。
高嶋さんは山形県東根市出身で、2021(令和3)年4月に同協力隊に着任し、退任するまでの3年間、「伝統工芸遠野和紙・楮保存会」(遠野町地域づくり振興協議会)の指導を受けながら、遠野和紙の原材料の栽培から手漉きまでの工程を学んできた。
独り立ちしてからは、上遠野に定住して遠野和紙の製造と販売を行う「キガミヤ」を起業したほか、同保存会とともに、障子和紙として親しまれてきた遠野和紙の魅力を広く発信するため、遠野和紙芸術文化研究会を設立。インテリアとしても使えるデザイン性の高い照明「遠野和紙あかり」を創作した。
2年の歳月をかけ、ようやく『和紙で食べられる』ように。その上で、満を持しての1点吊り。「正直、瀬谷さんが作業している動画が少なく、残してくれた和紙や道具から推測するところも多い。1点吊りは水をいかにコントロールするか、(紐を吊るしている)竹に身をゆだねることが求められる」と、唯一無二だった瀬谷さんの偉大さを実感する毎日という。
挑戦はまだ始まったばかり。いつか肩を並べるような遠野和紙『職人』として認められるよう、これからも走り続けるつもりだ。
(写真:1点吊りでの手漉きに挑む高嶋さん)