今夏の海開きに合わせて、四倉海水浴場に、およそ半世紀ぶりに「海の家」が復活した。運営するのは、四倉町の漁師本間仁史さん(45)。砂浜の目と鼻の先で生まれ、いまはウニ・アワビ漁や建設業に携わっている中で、「自分も地元を盛り上げたい」との思いから立ち上がった。15日の海開きから大いににぎわいを見せており、3連休のうち、特に晴天に恵まれた16、17日は行列ができるほどだった。
フランクフルトに焼きそば、かき氷、カレー、イカ焼き――。食欲をそそる多彩なメニューとともに、レンタル用の浮き輪も並んでいるのは、四倉海水浴場に立つ海の家「日と出」だ。店名には水平線を昇る太陽と、海の生き物・ヒトデ、さらに本間さんの名前「ひとし」を掛けている。
20代でウニ・アワビ漁を始め、今年も5月から素潜りを行っている。転機となったのは、東日本大震災・東京電力福島第一原発事故だった。古里から盛り上がりが無くなったことを残念に感じ、海の家の構想を胸に抱いてきたと明かす。
ただ実際にオープンを目指すと、手続きの多さに驚いた。四倉区区長会長の公平和俊さん(81)の快諾を得て、市観光振興課の担当者を訪れたところまでは良かったが、県小名浜港湾建設事務所やいわき中央署、市保健所など、書類の提出に追われた。
「何も分からないところからスタートし、申請書1つからてんやわんやでした」と本間さん。正式な回答を得ないと進めない工事もあり、今年の夏は無理かもしれないと頭をよぎったが、周りの期待に応えるためにも奮起し、海開き前日の14日まで準備に奔走した。
初日の15日はあいにくの雨となったが、四倉海水浴安全対策実行委員長を兼ねる公平さんが、海開き式のあいさつで、約半世紀ぶりに海の家ができたことを、自分のことのように喜んでくれた。公平さんは「こうして地元の人が、海の家を運営してくれることはありがたい」と笑顔を見せる。
ニュース