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ボタニカルアート

いのちを描く(イヌタデ)11月10日掲載

花のように美しく紅葉して

 イヌタデは、日本を含むアジアの温帯から熱帯まで分布するタデ科イヌタデ属の一年草で、道端や畑などに普通に見られる。
葉に辛味があって薬味などに使われるヤナギタデとは異なり、葉に辛味が無くて役に立たないので「イヌタデ」と呼ばれるという。犬にとっては迷惑な命名だろうが、イヌタデ自身はどう呼ばれようが気にしてはいまい。
 秋遅く、花が少なくなった晩秋の頃、寒さが加わるにつれて今まで緑緑していた葉や茎は紅葉する。刈り取った田んぼの一角で、霜枯れのあぜ道で、砂利道の縁で、燃え立つような紅色の群れが目を惹く。
葉も茎も、花も全体が紅紫色に変わり、黑っぽい実を包んだ果実は三角形をした紅い萼に覆われて恰も花が咲いているように見える。『イヌ』と名付けられた草花の精いっぱいのアピールだろうか。
 気が付くと、傍らに咲き遅れたツユクサが水色の花を咲かせている。寄り添うように咲いているその様はイヌタデの紅色と相まってお互いが引き立て合い、穏やかなコラボを成している。豊かであらゆるいのちに優しい環境がいつまでも続いて欲しいものだとしみじみ感じた。
(ボタニカルアートの世界:冨田武子)

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