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医療創生大の角田教授ら 薬剤師の疑似科学巡る尺度開発「批判的思考強化を」
医療創生大薬学部の角田大教授を中心とした研究グループは、一見科学的であるように見えるが、実際に科学的根拠がなく実証も反証もできない「疑似科学」を巡り、薬剤師の視点を評価する新尺度「PCS(疑似科学批判尺度)」を開発した。
科学的な裏付けがない主張や製品の是非を判断するなど、薬剤師としての知識と判断力を養う指針となり、やがては適切な服薬につながる。角田教授は27日、同大いわきキャンパスで研究の成果を発表し、「薬剤師の『批判的思考を強化する』ことは不可欠。学生たちや現場の薬剤師に広げていきたい」などと意気込みを語った。
この食品はウイルスに効く。〇〇を飲むと免疫力が上がる――。角田教授は新型コロナウイルスの感染拡大により、科学的な裏付けがない主張や製品が目立ったと指摘した。誤った情報に惑わされないためにも、薬剤師が正しい知識と判断力を持つことが重要と強調する。
今回の研究では、2023(令和5)年4月から5月にかけ、全国の病院と薬局、ドラックストアに勤務する薬剤師571人に対し、疑似科学に関する項目を含めたアンケートを実施した。値が高いほど批判的思考が強く、疑似科学的主張について否定的な「PCS」を導き出した。PCSの平均値は72・9ポイントで、多くの薬剤師のリテラシーが高いことが分かったという。
ただ、項目の中で「ゲルマニウムの入ったお湯に手足を浸すと、血液循環とともに倦怠感からの回復が促進され、肩こりが改善される」「空気中のマイナスイオンは、私たちの心身の健康を促進する」などといった〝自然治癒の迷信〟について、薬剤師によって評価が異なった。
「一部の薬剤師が代替療法について根拠のない信念を持っている可能性を示し、それが専門的判断に影響をおよぼす可能性がある」と角田教授。一方で、薬剤師は疑似科学のようなものを求める患者に対し、一方的に否定することは必ずしも正しくないとも呼びかける。「大切なことは患者さんと信頼関係を構築し、状況をしっかりと傾聴していくべき」
一連の内容は、6日発行の国際学術誌「ファーマシー」に論文が掲載された。発表には薬学部長の松本司教授、薬学部の出崎克也教授(研究推進担当)も同席した。
(写真:成果を発表する角田教授=中央。左は松本教授、右は出崎教授)