高校野球の監督を務める人たちの多くは、学校の先生だ。プロではないから日中は教室で授業を行い、放課後、部活動の一環として選手たちを指導する▼週末の休みはほとんどない。それなのに10年、20年と監督業に就いている。その魅力はおそらく、当人にしかわからないだろう▼この夏、監督たちの涙を何度も見てきた。選手たちのそれとは違う、なかなか味わいのある涙だった。試合に敗れた後、あるチームが球場外の木陰で車座になり、ミーティングをしていた。監督は49歳。選手たちとは親子ほどの年齢差だ。監督歴23年の中には甲子園で采配をふるった経験もある▼彼がどんな言葉をかけたか聞こえなかったが、やがて選手たちの目からみるみる涙がこぼれ落ちてきた。選手の年齢は変わらないが、監督は毎年1つずつ年をとる。夏が終われば、また1からチームを作り上げなければならない。この繰り返しだ。監督たちに、ひとまずねぎらいの拍手を送りたい。
片隅抄