「言葉にならないくらいうれしい」。鈴木貞男さんは77歳。元教員で、小名浜一中では野球部を率いて全国大会に出場、退職後は自宅に近い磐崎小の児童のために少年野球スポ少を立ち上げている。球場で写真を撮っている姿をよく見かけたが、教え子たちが卒業するときに贈るのだという▼そんな鈴木さんが、いわきから甲子園へと『いわき野球塾』を立ち上げたのは平成17年。中学の部活動を終えた選手に夏以降、硬式ボールで練習や試合経験を積ませるのが目的だ。しかし最初は選手が鈴木さんの好意に甘えるばかりで、熱心さは感じられなかった。それでも鈴木さんは我慢強く、中学生に今、硬式で練習することの大切さを説いた▼そして念願はかなった。塾の練習会場を提供してくれたいわき海星には6人の野球塾出身者がいる。聖光学院の石井成投手、常総学院の主砲内田靖人主将もそうだ。がんと闘う日々の鈴木さんだが、甲子園へ行く日を楽しみにしている。
片隅抄