先日の本欄で触れた草野心平の詩集『第四の蛙』からもう1つ、「白い蛙」について。体の色が白いため周囲の蛙から恐れられ、仲間外れにされる〝ひむりーる〟の孤独を描いたものだが、この詩には直木賞作家重松清の短編集『青い鳥』で出合った▼『青い鳥』は、吃音症の中学教諭がいわば「救い難い生徒」に寄り添う連作集で、中の「ひむりーる独唱」という作品に、この詩のことが登場する。孤独に苦しむ男子生徒に、教諭が読んでみることを勧めるのだ▼そこで自分もと思ったが表題が出ておらず、「白い蛙」そのものにたどり着くまで時を要し、結局草野心平記念文学館に教えてもらった。そして読んでみて、優れた作品とは、第一線の作家が自作に取り入れてまで読者に伝えんとするものなのだと、深い感慨を得た▼同様に『青い鳥』をきっかけに心平の詩を読んだという人もいよう。あらためて心平の偉大さに触れた今、郷土の大先輩たることが何とも誇らしい。
片隅抄