言葉を文字にして伝える職にありながら、いまだ語彙力の未熟さを感じることも多い。言い訳がましいが、新聞記事は「分かりやすい表現」を第一とするため、常套語を使うことも多くなる▼講演会などでは「来場者は熱心に聞き入った」、演奏会では「舞台に温かい拍手が送られた」といった具合だ。こうした表現は無難ではある▼しかし実際、〝熱心に聞き入っている〟姿は、メモを取っていたり、講師の顔を見つめていたり、話にうなずいていたりとさまざまだ。ただ、このような様子をそのまま書き連ねては、締まりがない記事になり、分かりやすさを削ぐことにもなる。語彙力を磨く必要性を痛感するのはこんな時だ▼斎藤孝は、著書『語彙力こそが教養』の中で語彙力アップの王道は読書と説く。一方「ネットやテレビでも語彙力は磨ける」とも。要は好奇心を持って言葉に接することなのだ。常套語に頼らない文章を作るトレーニングに終わりはない、と自覚した。