2000(平成12)年7月15日のふくしま海洋科学館「アクアマリンふくしま」の開館当初から飼育・展示し、約800種の生き物たちを代表する海獣として親しまれてきたトドの「イチロー」(オス)が、28歳1カ月で息を引き取った。
国内で飼育されているトドの中では3番目の高齢個体で、6月からほかの個体の繁殖を促すため、バックヤードで飼育し、普段と変わらず生活をしていたが、7日に入り食欲がなくなり、翌8日には呼吸も困難に。懸命の治療の甲斐なく、9日午後10時ごろに亡くなった。死因は老衰という。
イチローは北海道・室蘭水族館で生まれ、同・小樽水族館をへてアクアマリンふくしまへ。600kgを超える巨体から絞り出す鳴き声は本館入り口まで届くほどで、給餌(きゅうじ)の時間にはダイナミックな動きで、来館者たちを魅了し、同館を代表する海獣として老若男女問わず人気を集めていた。
東日本大震災の際は、伊豆・三津シーパラダイス(静岡県沼津市)に一時避難し、受け入れ態勢が整った2012年3月16日に帰還。震災では津波で電源を失い、多くの生き物が命を失う厳しい状況の中、震災を乗り越えた姿は〝復興に向けた希望〟として、多くの人々の心を打った。
また、国内2番目の高齢個体で、〝つがい〟のフク(28歳2カ月)=高齢のため昨年からバックヤードで飼育。老衰の兆候が見られ、延命治療をしている=との間には、「まりん」「シマ」「ハマ」と3頭の子どもが生まれ、話題となった。
開館当初から体調の管理をしてきた獣医師の富原聖一さん(50)はイチローを見送り、「アクアマリンふくしまの開館とともに長生きしてくれて、本当にありがとうと言いたい」と話す。同館入口には20日まで献花台が設けられており、愛してくれた来館者への感謝の気持ちも言葉にしていた。
イチローが暮らした「北の海の海獣・海鳥」コーナーでは現在、「ラーズ」(メス、1997年6月30日生まれ)と「ライ」(オス、2013年7月2日生まれ)が飼育・展示されている。
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