鹿島町走熊のギャラリー創芸工房の企画展「無限に拡がる布-アジアに学ぶ・針仕事展」が17日まで、同ギャラリー開かれている。
同ギャラリーでインド・ベンガル地方に伝わる手仕事「カンタ刺繍(ししゅう)」に取り組む市民15人の大小さまざまな作品を紹介。訪れた人は微細な運針で描かれた絵画のような刺しゅうに見入っている。
サンスクリット語で「ボロ」の意味を持つ「カンタ刺繍」。着古してやわらかくなったサリーなどを重ね、細かく刺しゅうを施すことで補強、布を再利用する。日本の「刺し子」にも通じるが、カンタ刺繍の特徴はその自由な表現だ。
細かい地縫いを施した表面は「ちりめん」のような風合い。その中にフリーハンドで縫う絵柄は身近な動物や草花、人間、幾何学模様など遊び心も垣間見える。かつては女性が家族を思いながら長い時間をかけて作品を仕上げたが、現在はほぼ廃れてしまった。
そんな「カンタ刺繍」に現地で出合い、技法を再現させ、日本に広めた第一人者が刺しゅう作家の望月真理さん(昨年3月に他界)。望月さんは一時、いわき市小川町の築300年の古民家で、都会との二拠点生活していた時期があった。
いわきの自宅でも刺しゅう教室を開いており、同ギャラリーオーナーの鈴木智美さんも、直接指導を受けたメンバーの一人だ。その後、望月さんが神奈川の自宅に戻ることになり、2008(平成20)年には、同ギャラリーで望月さんと教室生たちの作品展を開催した。
2020(令和2)年にもメンバーのカンタ刺繍展を開いた。その際、関連イベントとして開いたワークショップに参加したのが、今回の作品展に出品した15人だ。教室としてはじめての作品展で、タペストリーや衣類、コースター、ブローチなどを展示。貴重な現地のオールドカンタも展示し、訪れる人はその細やかな手仕事にため息をもらしている。
開廊時間は午前10時~午後5時。
(写真:大小さまざまな作品とギャラリーオーナー鈴木さん)
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