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31日と6月1日 平・ファロで詩の朗読と劇 磐城高演劇部出身の大学生企画
東日本大震災・東京電力福島第一原発事故を踏まえ、いわき市出身の大学生3人が自らの体験や過去との対話をモチーフに紡いだ詩の朗読と劇「波にすませて」が31日と6月1日、平字三町目のゲストハウス&ラウンジ FARO(ファロ)をメインに開催される。
作・演出は新妻野々香さん(22)=早稲田大文化構想学部4年=が手がけ、出演はこっちゅんこと、菅波琴音さん(21)=日本大芸術学部4年=。創作を支える観測を村山由莉さん(21)=津田塾大学芸学部4年=が務めた。
いずれも磐城高演劇部の同級生で、2月に東京都内で行った試演会に続き、満を持してふるさと・いわきで本公演を迎える。
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原作は高校時代に文学部にも所属し、鈴凪薫香の名で詩人として活動する新妻さんの作品で、昨年度の県文学賞詩部門奨励賞に輝いた「街の灯」。本公演では新作書き下ろしを含めて構成し、新たに一人芝居となった。
3人は震災・原発事故当時、小学1年の3月だった。「当時を覚えている最後の世代。特段意識するわけではないが、まちの風景は間違いなく変わっており、ともに記憶を旅することができれば」と口をそろえる。
それぞれ異なる進路を進んだが、「このメンバーで何かやりたい」と自然と集まった。新妻さんは「震災を知っている人、知らない人がいる中で、こっちゅんと見る人がどのような関係性となるか」と期待を寄せる。
菅波さんは「朗読にせよ劇にせよ、『伝える』ではなく『一緒に考える』ことを目指したい」と明かす。自らが発する言葉は果たして素の自分なのか、役者としてなのか、まったく関係ない赤の他人なのか――。それぞれに語られなかった物語があり、同じ空間を共有する人たちと思索にふけることができればと重ねる。
そして公演に欠かせないのは村山さんの存在。舞台のマネージメントから2人の相談相手、プログラムノートの編集まで多岐にわたる役割を担っており、適度な距離感で共に歩んできた。「即興性が強いため、稽古の段階から内容が変遷してきた。ぜひ偶発性を一緒に楽しんでほしい」とほほえむ。
公演に選んだファロは、3人が高校時代にしばしば通った思い出の場所。店名は灯台を意味している中で、さまざまな人たちが集い、出会い、次の場所へ進む道しるべとなることに共感した。
さらに上演にあたっては、国による歩道の有効活用が可能となる「歩行者利便増進道路(ほこみち)」として、県内初指定を受けたいわき駅前大通りにも飛び出し、ファロの店舗前を活用する。菅波さんが心酔する劇作家・寺山修司(1935~83)にあやかり、市街劇としての一面も持っているという。(雨天時は変更あり)
「当日は温かい空間が広がれば」。彼女たちはまっすくなまなざしで呼びかけた。
両日とも午後5時半開演(上演時間は30分程度)。チケットは無料(投げ銭制)。申し込みは専用フォーム<こちら>から。会場に直接来場することも可。終演後には企画経緯や創作秘話を交え、来場者との座談会を催す。
(写真:本番に向けて準備を進める新妻さんら)