年の瀬に訃報が飛び込んだ。双葉郡からいわき市に避難した住民らが、東電に対して集団訴訟を起こした「いわき避難者訴訟」の原告団長で、楢葉町の宝鏡寺住職・早川篤雄さんが亡くなった。83歳だった▼いわき市の高校で教員を務めていた昭和47年、公害問題の住民組織に加わり、半世紀にわたって、反原発の声を上げてきた。始めは関心を持った住民たちも、さまざまな圧力で離れていったと、早川さんは当時について語っていた。原発事故によって、早川さんの言葉が正しかったと証明された▼震災前までは、反原発の運動を展開するのは、一部の思想信条を持った人たちだと勝手に考えていた。原子力発電が不可欠と思っていた。神話を信じていた一人だったと恥じる▼東電への集団訴訟もあって、賠償基準の中間指針も見直された。市民にも新たに12万円が追加されることが決まった。声を上げる大切さを、改めて強く感じる。心から冥福をお祈りいたします。
片隅抄