かつて神戸を訪ねた折、阪神大震災の復興住宅が立つ地区を通った。整然とした集合住宅が並ぶ光景に、寂しさを感じた覚えがある。震災前とは違う暮らしぶりにならざるを得なかった人々の生活が透けて見えた―気がしたのだ▼いわきでも10月初め、市が災害公営住宅整備についての概況を発表した。25~27年度に、津波被災地区を中心に、7地区の16カ所に1500戸が整備される▼研究者による神戸の例を示せば、復興住宅の入居者には、自力再建が困難だった高齢者や低所得層が少なくなかったという。確かに、生計維持者が若かったり収入が多かったりすれば、時を置かずの生活再建が可能なのだろう▼いわきにおいて、神戸のケースがそのまま当てはまるとは言わぬが、災害公営住宅いわば市営の復興住宅には、やはりそうした点を十分に考慮した整備を望みたい。また、より重要視されるべきが、近隣とのコミュニティー確保の問題であることはいうまでもない。