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海洋放出の現場ルポ 何重にもモニタリング 東電「理解醸成で信頼を」

 いわき民報社は30日、東京電力福島第一原発の汚染水を浄化した後の処理水について、24日に始まった海洋放出の様子を単独取材し、処理水が保管されているタンクから移送され、海水で希釈される設備などを確認した。9月1日からは福島県沖で沖合底引き網漁が解禁される中で、漁業者の風評に対する懸念はぬぐえないが、どのように海洋放出が運用されているかを紹介したい。
 海洋放出は、処理水に残る放射性物質トリチウムの濃度が、国の基準の40分の1(1リットル当たり1500ベクレル)未満になるよう、海水で希釈される。24日からの初回では、17日間かけて7800トン流す予定となっている。
 処理水はK4タンクと呼ばれる場所で受け入れて撹拌され、放射性物質の濃度を確認した上で、ポンプで送り出される。初回は1日あたり460トンが、海水で700倍以上に薄められる。
 このことは配管の太さからもうかがえる。タンクから海に向かう処理水の配管は直径10cmだが、海水を引き込むものは同90cmにもなる。トリチウムの濃度が福島第一原発から3kmで同700ベクレル、10kmで同30ベクレルで放出停止され、希釈される手前の部分には、遠隔操作できる緊急遮断弁が設けられている。
 希釈された後は上流水槽に貯められる。ここでは、トリチウム以外の放射性物質濃度に問題がないか、改めてモニタリングを実施している。続いて下流水槽を経て、海底トンネルを通じて、1㌔先の放水口から海に流されている。下流水槽の様子は非公開だが、「ザーザー」と滝が流れるような音がしており、取材当日の30日も海洋放出が行われていると実感した。
 放水口が1km先の理由に関しては、福島第一原発の至近にすると、流した処理水を、再び希釈用に取り込んでしまう可能性があり、それより先にすると、漁業権が設定されている点が挙げられる。さらに取水口と、1~4号機に近い部分を遮断することで、放射性物質濃度の高い海水を取り込むことを防いでいる。
 今後30年にわたって進められる海洋放出にあたり、東電の担当者は「さまざまな情報が入り乱れているが、現場を実際に見てもらうことで、理解を深める活動を続けていきたい」と強調する。
 30日までに海洋放出の運用にトラブルは起きておらず、海域モニタリングでは福島第一原発の3kmで、トリチウムは検出限界値(同10ベクレル)を下回り続けている。担当者は「放出した事実そのものを伝え、関係機関と連携しながら、世の中の皆さまに安心してもらうことで、信頼を積み重ねていきたい」と話した。

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