久之浜一小で創立80周年を記念した校歌の直筆譜が先ごろ“発掘”された。ペンを執ったのはNHK連続テレビ小説「エール」で、主人公のモデルとなった作曲家古関裕而▼古関裕而記念館によると、古関は本市の8校で校歌を手掛けた。創作にはエピソードが付き物だが、久之浜一小は格別。同校の卒業生で国民的歌手の霧島昇が、古里の後輩や親せきの思いを大御所の作詞家西條八十と古関に伝えて完成させた、当時としてはぜいたくな校歌だ▼背景も興味深い。久之浜一小には元々校歌がなく音楽に理解の深い校長が機運を盛り上げ、霧島の従兄弟のPTA会長が無理を承知で上京し頼み込んだ。校歌ではなくピアノを寄贈してはどうか、との話もあったという。校歌は昭和28年8月、母校に錦を飾った霧島が後輩の児童たちが初お披露目する▼先人たちの思いが詰まった直筆譜はまさに地域の宝。このコロナ禍であえぐ人たちに“エール”を送る存在となってほしい。
片隅抄